公開日
2025.12.18
治療と就業の両立支援指針案に関するパブリックコメントを提出しました
ピーペックは、治療と就業の両立支援指針案について、パブリックコメントを提出しました。
なお、本パブリックコメントは2025年12月10日から2026年1月9日まで募集されています。
治療と仕事の両立支援について、これまでは国が策定したガイドラインに基づき、事業主の自主的な取り組みとして実施されてきました。しかし、2026年4月に施行される労働施策総合推進法の改正条文において、「治療と就業の両立支援」という項目が新設され、両立支援のために必要な措置が努力義務となります。今回の案は、改正労働施策総合推進法に基づいて事業主が適切な措置を実行するための指針案です。
ピーペックが提出した意見は下記の通りです。
#1(3)治療と就業の両立支援を行うにあたっての留意事項
②労働者本人の取組
疾病を抱える労働者本人が、治療や疾病の増悪防止について適切に取り組むことが重要である。現状の「労働者本人が(…)が重要である」という記述だけでは、労働者個人の努力や自己管理能力に責任が偏り、事業主の責務が相対化される懸念がある。
上記を踏まえ、下記の文言を追加してはどうか。
【修正案】疾病を抱える労働者本人が、治療や疾病の増悪防止について、事業主の支援とともに適切に取り組むことが重要である。
#2(4)① 事業主による基本方針の表明等と労働者への周知
事業主として、治療と就業の両立支援に取り組むに当たっての基本方針を表明し、全ての労働者に周知する。
第2回検討会における辻本構成員の指摘にもある通り、職場において労働者は相対的に弱い立場にあり、疾病を開示して支援を申し出ること、制度を利用することには強い不安が伴う。また、山内 貴史(2024)によれば、小規模事業場における両立支援の申出意図の促進要因として、協働的風土の醸成や職場環境改善が指摘されている。(3)③の通り支援は労働者本人からの申出を基本としつつ、それを促進する職場の協働的風土の醸成が必要であることから、下記の文言を追加してはどうか。
【修正案】事業主として、支援を必要とする労働者が適切な情報を得て支援を求めることができるよう、治療と就業の両立支援に取り組むに当たっての基本方針を表明し、全ての労働者に周知する。
#3 (4)④ 治療と就業の両立支援に関する制度、体制等の整備
休暇制度・勤務制度の整備、申出があった場合の対応手順及び関係者の役割の整理、
関係者間の円滑な情報共有のための仕組みづくり等
#2の指摘の通り、③で申出を基本とする以上、労働者が実際に申出を行えるよう、申出を妨げる心理的障壁を取り除くための具体的な環境整備が2.(4)においても不可欠である。
上記を踏まえ、下記の文言を追加してはどうか。
【修正案】休暇制度・勤務制度の整備、申出があった場合の対応手順及び関係者の役割の整理、関係者間の円滑な情報共有のための仕組みづくり等
また、労働者が不利益な取扱いを受ける懸念なく申出を行えるよう、申出内容や情報が適切に保護される体制を確保するとともに、事業主が申出を否定的に評価しない協働的な職場環境を構築するための措置を講じる。
#4 (5)治療と就業の両立支援の進め方
①労働者が、事業主に申出を行った上で、主治医から支援に必要な情報(症状、治療の状況や就業上の措置等に関する意見等)を収集して事業主に提出
治療と仕事の両立支援に関する情報・人材基盤の実態調査および支援拡充のために必要な両立支援コーディネーターの育成に資する研究によれば、医療機関における両立支援相談窓口の設置割合は全体で10%未満であり、医療文化と会社文化の違いが十分に理解されていないことも指摘されている。医療機関における両立支援コーディネーターの課題として、支援対象者の治療と仕事の両立に必要な正確な職場の情報を収集できないとしている回答がどの事業主規模においても6割を超えている(同、豊田,2023)。
第1回検討会においても、主治医は労働者ではなく患者として診ており、産業保健や労働衛生に関する情報の取得は困難である旨指摘されている。単に労働者が主治医に意見を求めるだけでは、実際の労働内容に即した内容が示されないことも考慮し、事業主側の両立支援カード、勤務情報提供書等の活用も想定して、原案の記述に加え、下記の文言を追加してはどうか。
【修正案】事業主は、労働者からの求めに応じ、主治医が意見書を作成しやすいように、職場の状況に関する情報提供を行うなど、意見の収集を支援する。
#5 (4)⑤ 事業場内外の連携
本指針案は、事業主に対して多岐にわたる配慮や環境整備を求めているが、検討会でも指摘されている通り、特に人的・経済的リソースの限られる中小規模事業主において、これらを独力で実施することは困難であり、国や都道府県等の支援が不可欠である。
事業主に対して、国の公的リソース(助成金や産業保健総合支援センター等)の積極的な活用を指針内で具体的に促し、同時に国としても事業主の支援を継続的に行うべきである。上記を踏まえ、下記の文言を追加してはどうか。
【修正案】支援の取組に当たっては、産業保健スタッフや主治医と連携するとともに、必要に応じて、主治医と連携している医療ソーシャルワーカー、看護師等や、都道府県労働局、都道府県の産業保健総合支援センター、保健所等の保健師、社会保険労務士等の支援を受け、国等が実施する支援制度を積極的に活用する。
#6 指針全体の実効性を保証するための国の支援について
本指針は事業主に「個別の実情に応じた支援」という極めて高度な判断を求めている。こうした個別の実情に応じた支援の推進は、両立支援の形骸化を防ぐ一方で、#5で指摘した通り、リソースや専門知識を持たない多くの中小企業にとって法的・経済的リスクを伴うものである。
特に、労働契約の変更や、非正規雇用者への対応、難病やがん等の疾病再発時への長期的な配慮は、企業の経営判断に直結する課題である。本指針を理想論ではなく現場に即した実効性あるものとするため、国に対し以下の重層的な支援措置を推進することを強く要望する。
・中小企業への情報提供を継続的に実施すること。(関連指針、助成金、産業保健総合支援センター等の支援機関等)
・個別事例ごとの相談対応等の伴走支援を継続的に実施すること。(産業保健総合支援センター、両立支援コーディネーターの養成・配置を含む総合的な個別支援等)
・支援における経済的障壁の解消を継続的に行うこと。
(治療に伴う業務遂行能力の低下や代替要員の確保、労働条件変更に伴う調整等に対応するため、両立支援等助成金のさらなる拡充と、中小企業が活用しやすい要件緩和等)
・両立支援加算の現状に即した見直しを行うこと。
(算定状況が極めて低い現状を鑑み、対象疾患の拡充やフローの見直し等)