公開日
2025.01.17
みんつくゼミナール2024第3回「研究者と病気をもつ人の対話コトハジメ 〜患者市民参画が当たり前になる社会を目指して~」を開催しました。
2024年12月15日、みんつくゼミナール2024第3回「研究者と病気をもつ人の対話コトハジメ 〜患者市民参画が当たり前になる社会を目指して~」を開催しました。
みんなでつくろう、これからの医療プロジェクト<People’s Power flow into Healthcare : PPH>は、あらゆる人が立場を超えてこれからの医療を一緒に考え、創っていくためのプロジェクトです。
病気をもつ人、ライフサイエンス企業、医療者、研究者といった立場の異なる人たちが協働し、これからの医療をつくるにはまずお互いを知ることが必要であることから、2022年より、「みんつくゼミナール」と題したセミナーを開催してきました。3年目となる「みんつくゼミナール2024」は、全4回のセミナーを開催しています。
今回も講演とワークショップの2部構成で行い、病気をもつ人、支援者、患者会関係者、ライフサイエンス企業関係者など総勢43名(ワークショップ16名)の方にご参加いただきました。

第1部は東京大学医科学研究所 公共政策研究分野 教授 武藤 香織氏より、「研究者と病気をもつ人の対話コトハジメ」と題して、武藤氏ご自身の原体験をはじめ、<疾患>と<病>の違いや、パートナーシップ確立のポイントなどについて講演いただきました。
自身の病気をきっかけに医療倫理に関心をもち、研究者の道を歩むことを決意した武藤氏。20年以上にわたり病気をもつ人と共に協働してきましたが、研究者と病気をもつ人双方にとってより良い研究を行うためには、お互いの考え方の背景を理解しながら、ざっくばらんにやりとりを重ねることが不可欠だといいます。
また、研究参加者には原則的な権利・責務があり、疑問を持った場合は積極的に質問してよいこと、研究への参加をやめる権利を持っていること、ただし、その意思を表明するまでのデータは研究者が利用できることなど、具体的な話も交えてわかりやすくご説明いただきました。
講演を受けてのQ&A・ディスカッションでは、研究への参加の取りやめや、研究者との接点の持ち方、研究・調査の謝礼に関することなど、多くの質問が寄せられました。
武藤氏ご自身のエピソードも交えた講演は、研究者の存在を身近に感じながら、研究への理解も深められる内容となっています。講演の内容は、以下のアーカイブで視聴可能ですので、ぜひご覧ください。


第2部のワークショップでは、「みんなにとってより良い研究(アンケート調査)ってなんだろう?~患者会・研究者それぞれの立場で必要だったと思うことはなんですか?~」をテーマに、4つのグループに分かれてワークショップを行いました。
研究を進めるなかで、両者のコミュニケーション不足によってトラブルが生じることは珍しい話ではありません。そこでよくあるトラブルの例を挙げ、お互いどのような対応をすればよかったのか、コミュニケーションの問題点や改善点などを意見交換しました。
各グループの発表では、研究者に対しては依頼の段階で書面でのやりとりや目的の共有・明確化、参加者への体調の配慮など、患者会に対しては当事者を含めた積極的な対話やアンケート作成段階からの協力、研究依頼の規定を設けるなどの対応が必要という指摘がありました。
病気をもつ人、ライフサイエンス企業、患者会の関係者など、それぞれの視点や経験をもとに活発な議論が行われ、参加者の方からは「有意義な議論になった」「研究者としても患者としても身が引き締まる思いでした」などの感想をいただきました。
できることなら良好なパートナーシップのもと協働したいものです。そのためにも、研究者だけではなく、私たち一人ひとりがそれぞれの背景や事情を理解し、どのような伝え方をすればよいか、立場を超えて考える必要があることがわかりました。これは研究の分野に留まらず、患者市民参画全般にいえることでしょう。
私たちピーペックは、こうしたゼミナールの場も未来に繋がるPPIであり重要な”こえ”を上げるための機会であると考え、活動を広め、継続していきます。
アーカイブ動画
当日の写真

開催概要
開催日時:2024年12月15日(日)13:00~15:30
開催方法:Zoomミーティング
参加費:無料
主催:一般社団法人ピーペック みんなでつくろう、これからの医療プロジェクト
協賛:アステラス製薬株式会社/アストラゼネカ株式会社/大正製薬株式会社/第一三共株式会社/日本ベーリンガーインゲルハイム株式会社/ノバルティス ファーマ株式会社
参考資料
第1部の質疑応答で取り上げられた武藤氏の論文について、書誌情報と該当箇所をご紹介します。
※下記の論文のもとになった治験参加経験者のインタビューの一部は、NPO法人 健康と病いの語りディペックス・ジャパンにおいて「臨床試験・治験の語り」として公開しています。
なお、「やめる考えはなかった」人の声については、上記サイトの「参加継続/中止をめぐる思い」で紹介されています。こちらは日本語で掲載していますので、ぜひご覧ください。
<書誌情報>
Nakada H, Yoshida S, Muto K (2019)
“Tell me what you suggest, and let’s do that, doctor”: Patient deliberation time during informal decision-making in clinical trials. PLoS ONE 14(1): e0211338.
https://doi.org/10.1371/journal.pone.0211338 <以下、該当箇所を引用>
Among the 40 patients included in our analysis, three patients wondered whether they would participate in a clinical trial. Most patients who decided to participate in a clinical trial didn’t change their mind during the trial period, with two exceptions. Ct39 withdrew from a trial because she moved and ct40 withdrew because of financial reasons.
分析対象となった40人の患者のうち、3人の患者が臨床試験に参加するかどうか迷っていた。 臨床試験に参加することを決めた患者のほとんどは、 2人を除いて、試験期間中に考えを変えることはなかった。ct39さんは引っ越しをしたため、 ct40さんは経済的な理由によって同意を撤回した。 Patients of all decision-making types also tended to come to a quick informal decision and stick with this decision throughout the trial period. Ct23, for example, was invited to participate in a clinical trial on diabetes by her primary physician (passive participation).She felt uncomfortable and painful drawing her own blood every day during the trial period; despite this, however, she strongly wished to accomplish her hospital visits till the end as she was instructed by her clinical trial staff. She talked she never wished to withdraw and stood by her decision to participate.
意思決定のパターンに関わらず、患者は概して即座に非公式な決定を下し、その決定を試験期間中、 ずっと維持する傾向にあった。例えば、ct23さんは、 かかりつけ医に誘われて糖尿病の臨床試験に参加した( 受動的な参加パターン)。彼女は試験期間中、 毎日自分で採血することに不安と苦痛を感じていた。しかし、 それでも治験スタッフの指示に従って、 最後まで通院を続けたいと強く願っていた。彼女は、 決して参加を取りやめたいとは思っておらず、 参加の意思は揺るぎないものだと語った。