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公開日 2022.02.04

「どうしようもある」状態の具体的な事例紹介②

「どうしようもある」状態の具体的な事例紹介②

前回に引き続き、当事者が課題解決に主体的に関わった「どうしようもある」具体的な事例を見ていきます。

※以下の記事内容は、紙面の都合上概略で紹介しています。詳しい内容や経緯に関しては、末尾の参考資料をぜひご覧ください。

前回は、2015年に成立した難病の患者に対する医療等に関する法律(難病法)における当事者団体の役割についてご紹介しました。
病気をもつ当事者・家族や、市民が課題解決に関わる方法は、法律の成立だけではありません。
例えば、自分の治療について情報を得て意思決定を行う、積極的に治療計画に関わるなどの「治療」に関することはもちろん、その治療方針のもとになる、医学研究や、学会や専門家でつくるガイドライン作りに当事者が参画することもあります。
もう少し大きなレベルでは、通っている病院の経営や運営に、市民・当事者として参画することが欧米では一般的になっています。(※1)
そして、個々の病院にとどまらず、先に紹介した難病に関する法律のように、国全体の医療政策について、市民・当事者として参画することもできます。

今回は、日本ではあまり一般的ではない、病院における患者諮問委員会について紹介します。
患者諮問委員会とは、現在通院している患者(または過去に通院していた患者)、家族、場合により一般の地域住民から構成される委員会で、当事者の声を反映させたよりよい病院運営やサービス提供を目指すものです。
例えば、アメリカのジョンズホプキンス大学病院の患者諮問委員会は、委員会の目的を以下のように定めています。(※2)

“患者さん、ご家族、医療従事者の間で、尊敬に満ちた効果的なパートナーシップを促進する
患者さん、ご家族、スタッフ間の理解と協力を深める
ケアを、患者さん・家族を中心としたものへ変化させる
品質、患者さんの安全性、患者さんの健康状態を改善させる
病院と地域社会とのつながりを確立させる”

同病院では、小児病院を含めた多くの病院組織で計20の患者諮問委員会が、月に1回会議を開催しています。これは大人を対象としたものはもちろん、小児センターでケアを受けた患者とその兄弟姉妹が参加できる、12~21歳の患者・当事者を対象とした、ティーン&チルドレンズ・カウンシル(TACC)もあります。(※3)

例えば、最近の各委員会での成果として紹介されているものとして、以下のようなものがあります。(※4)

  • 最新の重要な情報を患者諮問委員会メンバーと共有するために、患者諮問委員会COVID-19ニュースレターを開始。これには、ウェブサイトやリソース、公開されている委員会や現在のプロジェクト、全国の患者諮問委員会組織からのウェビナーや記事などが紹介されています
  • 転倒予防の患者教育のために入院病棟で使用される「Score Your Fall Risk」のチラシにフィードバックを提供しました
  • 病院の戦略計画・イニシアチブ、腫瘍学モバイル・アプリの開発、MyChart Bedside、患者教育ツール、転倒防止の標識、職場暴力の掲示、リアルタイム位置情報システムバッジ、Viraghセンターでのチェックイン、薬の引き取りプログラムの宣伝と掲示、患者諮問委員会ウェブサイトの提案に関するアイデアを出し合いました
  • 病院の広告宣伝・ウェブコンテンツアドバイザリー・グループにボランティアとして参加し、病院のウェブサイトに掲載されるCOVID-19関連のコンテンツや資料について、思いやりのある言葉遣いや理解しやすさについて検討しました

通常日本の病院で、病院のケアやサービスについて、病院側と対等な立場でフィードバックをしたり、アイデアを出し合ったり、それを実現させることは困難です。まして、小児でケアを受ける立場となると、なおさらその声は医療提供側には届きにくい現状があります。

最初の わたしたちが考える「どうしようもある」についての記事で紹介したように、声は届くものの、解決策にどう影響するか明確でない「患者様の声」の投書箱があるくらいが一般的なのではないでしょうか。

私たちが考える、「どうしようもある」状態は、ひとつ前の記事でご紹介した通り、

困っていたり生きづらさを感じたりしている人達の課題が共有され、当事者として課題解決のための取り組みに主体的に関わっている状態

です。日本においても、医療を受ける側とされてきた患者・当事者が、一緒によりよい医療を考えていけるような環境づくりが必要です。
そうした環境づくりに向けて、ピーペックで「みんなでつくろう、これからの医療プロジェクト」を推進しています。プロジェクトについてはこちらもご覧ください。

ピーペックでは、こうした大きな社会的な課題から、個人の生活レベルでの課題まで、あらゆる課題を当事者として考え、解決に向かって主体的に関わる状態が当たり前になるように、様々な方向から活動を続けています。

(※1) Herrin J, Harris KG, Kenward K, Hines S, Joshi MS, Frosch DL. Patient and family engagement: a survey of US hospital practices. BMJ Qual Saf. 2016 Mar;25(3):182-9. doi: 10.1136/bmjqs-2015-004006. Epub 2015 Jun 16. PMID: 26082560; PMCID: PMC4789699.
2013-2014年に、アメリカの病院を対象に、患者諮問委員会の設置状況について調査。38%の病院が患者・家族諮問委員会を設置している。

(※2) PATIENT AND FAMILY ADVISORY COUNCILS  Johns Hopkins Medicine

https://www.hopkinsmedicine.org/patient_care/patients-visitors/patient-family-advisory-councils/
(※3) Teen and Children’s Council  Johns Hopkins Children’s Center

https://www.hopkinsmedicine.org/johns-hopkins-childrens-center/about-us/committees-councils/teen-childrens-council.html

(※4) Patient and Family Advisory Councils at The Johns Hopkins Hospital
https://www.hopkinsmedicine.org/patient_care/patients-visitors/patient-family-advisory-councils/jhh.html

参考資料
国民生活研究第 59 号第 2 号(2019 年)患者参加型医療が医療の在り方を変える
-21 世紀医療のパラダイムシフト 小松 康宏

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