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【調査結果】「外食に関する困りごと」のアンケート調査結果のご報告
病気や困りごとがあっても食事が楽しめる世の中を目指して情報発信をしている「一緒にいただきますプロジェクト」が実施した、外食に関する困難点やニーズを可視化するためのアンケート調査の結果を報告いたします。調査は、病気や障害をもつ人やその家族・支援者250人を対象に、2024年11月~12月に行いました。
この調査によって困りごとが周知され、病気や障害をもつ人同士の共感や助けを求めやすい環境づくりにつながること、また、ニーズを基に改善策が生まれ、誰もが食事を楽しめる社会を目指すことを目的としています。
全回答・詳細は下記レポートよりご確認ください。
https://ppecc.jp/mt_output/docs/activity/5479d80503ccbc495690fe4e5d977b2bec747df5.pdf
■調査概要
調査方法|ウェブアンケート(Googleフォーム)
調査対象|病気や障害をもつ人 ※家族等による代理入力可
調査期間|2024年11月1日(金)~12月31日(火)
有効回答者数|250名
アンケート実施主体| 一般社団法人ピーペック 一緒にいただきますプロジェクト
■調査内容
質問1~5.回答者の属性
質問6.外食の頻度
質問7.困りごとの種類
質問8.困りごとの原因となっている病気や障害
質問9.困りごとの詳細
質問10.改善策や飲食店に望むこと
■回答者の属性
有効回答者数は250名でした(うち、家族や支援者による代理回答は43名)。調査対象の年齢分布で最も多かったのは男女とも40~64歳でした。
同居状況については、配偶者・パートナーやこども、親と暮らしている人が多く、一人暮らしは36名(14.4%)でした。なお、組み合わせについては『配偶者・パートナー、こども』と同居している人が61名と最も多い結果となりました。
■外食の頻度(質問6)
外食の頻度を聞いたところ、週に1回以上外食をする人は107名(42.8%)、月に1回以上は212名(84.8%)と、病気や障害があっても、外食は身近な習慣であることが分かりました。
■どんな種類の困りごとがあるか(質問7)
病気や障害が理由で、外食の際に最も困っていることの種類を聞きました。
困っていることが「特になし」と回答した人は38人(15.2%)にとどまり、残りの212人(84.8%)は何らかの困りごとがある結果となりました。
困りごとの種類では、成分表示や量の調整など「食事内容やメニューについて」が118件(困りごとのうち55.6%)と最も多く、次いで「店の設備や食器などハード面について」が33件、「スタッフとの会話などソフト面について」が7件でした。
また、「その他」として自由記述があった54件のうち24件は食事内容、12件はハード面、7件はソフト面と分類可能な内容でしたが、例えば「1型糖尿病なので人目につかずインスリンを打てる席に座れるかどうか」といった、容易に分類できない困りごとも散見されました。
■困りごとの原因となっている病気や障害(質問8)
外食の際の困りごとがある212人に、最も影響している病気や障害を1つだけ答えてもらい、大きく10種類の病気に分類しました。
今回の調査では、糖尿病、次いで腎臓病の回答が多くありました。いずれも日本では成人の約5人に1人が罹患、または予備群とされ、国民病とも言われています。
■外食の際に困っていることの詳細(質問9)
病気や障害が理由で、外食の際に最も困っていることを具体的に聞いたところ、困りごとは病気や障害によって傾向が異なりました。
【困りごとの傾向】
・食事内容やメニューについて:
困りごとの原因に糖尿病や腎臓病を挙げた127人のうち108人(85%)が食事内容やメニューに関する困りごとを挙げていました。体調に影響するためカロリー、血糖、ミネラル等を管理する必要があり、なかでも、「メニューで塩分量が分からない」「食事に含まれる糖質量が分からないと、インスリン量が決定できない」といった成分表示に関する悩みが94件と多数寄せられました。
また、「食事の量が多い。残す事に躊躇いがある」「抗がん剤の副作用で味覚障害があり、量もたべられなくなった。残すのも申し訳なくて外食する機会が減った」といった、食事の量に関する悩みもありました。
・店の設備や食器などハード面について:
困りごとの原因に神経筋の病気を挙げた16人のうち12人からは、車椅子や杖を利用することもあり、店内が狭かったり机や椅子などの段差に困る、コップが重いなどのハード面の困りごとが寄せられました。
・スタッフとの会話などソフト面について:
発達障害をもつ人の「予想外の質問をされた時に固まってしまい、周囲の人を困らせてしまう」、肺腺がんの手術で「声が出にくいので、声が届かない」といったコミュニケーションでの困難点や、神経筋の病気をもつ人の「注文後、自席まで食事を運んでもらえないと、自分では運べない」といったスタッフのサポートを必要とする困りごとが挙げられました。
また、精神の病気をもつ人からは、オーダー間違いやお店のシステムがわかりにくいなどの困りごとが寄せられました。
・その他の困りごと:
「席でインスリン注射を打ちづらい時はトイレに行くけれど、場所が遠いと食事前に低血糖なることがある」「頼んだ食べ物がいつ来るか分からないので注射のタイミングに迷う」といった、糖尿病をもつ人のインスリン注射を打つ場所やタイミングに関する悩みのほか、「パートナー以外の方との食事だと薬を飲むところを見られたくないため外食が難しい」「食事を行儀良く食べられない」といった、同行者や周囲の目を気にした困りごともありました。
全回答・詳細は下記レポートよりご確認ください。
https://ppecc.jp/mt_output/docs/activity/5479d80503ccbc495690fe4e5d977b2bec747df5.pdf
■調査まとめ
外食は、時間や仕事の都合で必然的に選ばれることもありますが、普段味わえない料理を手軽に楽しめる魅力や、人との交流、気分転換の手段としての価値もあります。今回の調査では、病気や障害が理由で、外食に関する困りごとがある人は84.8%という結果となりました。それでも、全体の42.8%の人が週に1回以上外食をしていることから、外食は生活に欠かせない食事の手段であることが確認されました。
困りごとの種類は病気や障害によって傾向が分かれる一方で、病気が違っていても、共通する困りごとがあることも分かりました。例えば、回答者の多かった糖尿病、腎臓病だけでなく、心臓病など循環器系の病気をもつ人も栄養素を気にしています。また、嚥下障害による食べづらさを感じている人、薬の副作用による味覚障害などをもつ人が、食事の量について同じ悩みを抱えています。
当プロジェクトへの意見として「声を上げないと困りごと自体がないもののようになってしまうので、アンケートはありがたい」「他の人の悩みや工夫も知りたい」といった"こえ"が寄せられました。
まずは挙げられた"こえ"を周知することが解決への第一歩と考え、この調査結果が、病気や障害をもつ人同士の共感や助けを求めやすい環境づくりにつながることを期待します。そして、今回挙げられた課題やニーズに対して、「一緒にいただきますプロジェクト」のInstagramアカウントを活⽤して解決策を募集・提案していきます。
今後は飲食店へのアンケート調査の他、外食ができない人や、中食、家での調理の際の困りごとにも耳を傾けていく予定です。
当プロジェクトでは、病気や障害をもつ人もサービスを提供する側も互いに暮らしやすい社会の実現を⽬指し、引き続き"こえ"を集め、情報発信を続けていきます。
■謝辞
本アンケートの集計・分析にご協力いただきました慶應義塾大学薬学部 教授 堀 里子氏、佐山 杏子氏、並びに研究室の皆様に感謝申し上げます。
■一緒にいただきますプロジェクトについて
2024年4月に開始した、食事に関わるお悩みや解決のヒントを集めて発信するInstagramアカウント。「病気や困りごとがあることで、家族や友人との食事を諦めている人と『一緒にいただきます』ができる世の中をつくりたい」という想いから始まったプロジェクトです。寄せられたお悩みのほか、病気をもつ人に優しいお店、アレルギー食対応の飲食店、食事管理に嬉しいサービスなどを紹介しています。
https://www.instagram.com/honnepost_itadakimasu/