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公開日 2023.01.20

わたしのこえ インタビュー【一般社団法人ピーペック 事務局(ITコンサルタント / 映像クリエイター)矢口教介】

わたしのこえ インタビュー【一般社団法人ピーペック 事務局(ITコンサルタント / 映像クリエイター)矢口教介】

今回は、ピーペック事務局(ITコンサルタント / 映像クリエイター)の矢口 教介のインタビュー記事をお届けします。
21年間療養生活を病院で過ごした後、地域で暮らしながら在宅で業務をしています。
病院と地域、そして情報を発信する側とそれを支援する側の複合的な視点から、仕事に対する想い、目標を語っていただきました。

一般社団法人ピーペック 事務局(ITコンサルタント / 映像クリエイター) 矢口 教介

1988年生まれ。6歳で筋ジストロフィー(LGMD)と診断される。病状の進行により療養生活を病院で21年間過ごす。29歳で病院から地域生活に移行し、現在24時間呼吸器を使いながら介助者のサポートを受けて在宅で業務に従事。ベンチャー企業を経て2020年よりピーペックに参画、広告・デザインを中心にウェブ制作、映像編集などを担当。

―――矢口さんの今の働き方を教えてください。在宅で介助者のサポートを受けながら働いていることについて、興味を持っている方も沢山いらっしゃるようです。

1日の流れを簡単に説明します。午前中は主に訪問医療の時間ですね。日や週によりますが、訪問看護、リハビリ、往診が入ります。基本的に毎日訪問医療の予定があり、午後からは仕事を含め、自由に使える時間として組み立てています。

ちなみに今日も午前中は訪問医療の時間でした。訪問リハビリが終わるとすぐに昼食です。咀嚼にも時間がかかるので、1時間半から2時間くらいかけて、13時から14時くらいまでご飯を食べている時が多いですね。昼過ぎから会議があるときは、11時からご飯を食べ始めていたりします。

仕事は午後すぐに始めると夜には疲れてしまうので、15時頃からゆっくり始めることが多いです。実は夜型なので、夕方の方が集中できますね。
19~20時に仕事を終えますが、遅くなると21時くらいになることもあります。こつこつ夜に作業していることが多いです。

―――ケアと仕事、生活がうまく組み立てられていますね。この働き方を始める前は病院で療養生活を送っていたと聞きましたが、どうやって今の働き方に至ったのでしょうか?

私は5年前の2017年に、当時療養生活を送っていた病院を出て、地域生活(病院・施設を出て、自立して暮らすこと)を始めました。病院での生活は仕事ができる環境ではなく、社会経験は文字通りゼロの状態でした。

地域で暮らし始めて、自分の居場所が欲しい、社会と繋がりたいと思い、仕事をしてみたいと思うようになりました。趣味で映像編集をしていたので、それを活かした仕事ができるのではと思って探し始めましたが、なかなか見つかりませんでした。
というのも、難病というだけで採用してくれるところがなく、加えて通勤ができないとなると就ける仕事はほぼゼロだったんです。

そんな時に、テレワークマネジメントという会社のセミナーに参加する機会がありました。今は当たり前に普及しているテレワークの紹介があり、これなら自分にもできそうだと思えました。
そこからご縁があって、当時スタートアップだった一般社団法人Your choice2020年にピーペックが一部事業譲受)に参画し、経験を積んで、ステップアップをしてきました。

ちょうどYour choiceもスタートアップだったので、未経験の私も、一緒に成長していこうと受け入れてもらったような形です。2020年にピーペックに移籍しました。

―――難病というだけで就労へのアクセスが制限されてしまう状況がありますよね。時代の先取りのテレワークで仕事をしていらっしゃるということで、普段はどのような仕事をしていますか?

動画編集をメインで行い、イベントのチラシ作成やサムネイル作成なども担当しています。また、受託案件としてウェブサイトの制作なども行っています。
その他の業務としては、合気道の先生の道場のコンサルティング(合気道の社会への広め方など)もしています。同じコンサルティング業務としては、訪問看護のコンサルティングもしています。私は長年病院で療養生活を送っていたので、医療者側と利用者側の双方の側面がわかるので、その視点を活かして助言をしたり、IT技術、連絡ツールなどの調整や提案などをしたりしています。

―――幅広くクリエイティブな業務を担っていますね。動画編集の知識や技術はどこで学んだのですか?

独学です。普段から動画を見るのが好きなのですが、このエフェクトはどうやって作るんだろう? と調べたり、気になった加工の方法を調べたりして、少しずつ技術を身に着けています。日々学び続けている感じですね。興味や好きという気持ちが原動力です。

―――動画編集をする上で、大切にしていることはありますか?

情報を発信する本人が、どう見られたいかを大切にしています。
こう思う原体験が、高校生の時にありました。実はNLANew Life Adventure)の全国高校生の主張の全国大会に選抜された際、自分の主張について、教育ビデオの撮影を受けたことがあるんです。

病気と分かった時のことや、家族との関わりがテーマだったのですが、完成した教育ビデオは、自分の思いとのギャップがあるものでした。
編集の仕方次第で、見え方、発信のされ方が大きく変わる事を当時実感し、逆に映像で伝えられる情報量の多さや魅力にも気づきました。自分が映像を創るなら、発信者がどう見られたいか、本人が見たときに嫌な思いにならない映像を創ったり、残したりしたいと感じました。

映像はいい面もありますが、表現の仕方によって意図せず発信者を傷つけてしまう怖さもあります。ですから、普段の動画編集でも、もちろん見る側が楽しく、見やすいことも意識はしますが、発信側の見え方、見せ方に注意して制作していますね。

―――動画編集で、印象に残ったエピソードなどはありますか?

ALSをもつ人が、自分をプレゼンするイベント企画(自分の生き方や想い、病気になった時の状況を罹患直後の人に伝え様々な選択肢があることを知ってもらう企画)があるのですが、ひとりじゃないというメッセージを、DVDとして映像に残す編集を担当した時のことが印象に残っています。

ALSは疾患の性質上、進行が早く、1か月でも状況が変わってしまうことがあります。動画の編集に数ヶ月から半年ほどかかり、出演されていた方がDVD完成前に亡くなることもあります。
そうしたときに、ご家族の方から、舞台に立てたのはあの時が最後で、形に残してもらえて家族にとってもいい思い出になり、喜ばれたという声を主催者の方からいただくことがありました。映像の仕事をしていてよかったと思える瞬間です。

―――映像の力を感じさせるエピソードです。仕事をする上で、こんなツールや環境があったらいいなというものはありますか?

もっとバーチャル空間が進化してほしいですね。今は業務でSlack(オンラインチャットツール)を使っていますが、テキストでのコミュニケーションが主で、顔も見えないので伝えたい気持ちがなかなか伝わりづらいと感じます。
気を遣うから声がかけづらい、ということもありますよね。バーチャル空間で、すぐそばに存在を感じられて、「ねえねえ」くらいの距離感で声をかけられる環境になると、もっと働きやすくなると感じています。

また、マウスに代わる入力装置や、作業方法の別の選択肢も考えたいですね。病状は進行していくので、今できていることが数年後にはできなくなることもあります。数年後には考えないといけない時期がくると思っています。

―――大事なことですね。日々の仕事もある中で、そうした将来のことは、どんな時に考えているのですか? 介助者が24時間いる生活だと、ゆっくり1人で考える…のも難しいのではないですか?

おっしゃる通り、介助者が常にいる生活なので完全に一人の時間はつくれません。もちろんひとりで作業をしていても気配は感じるので、ゆっくりできるご飯中や、寝る前などに考えていますね。

―――寝る前は考え事にいい時間ですね。ちなみに、矢口さんが寝るとき、介助者はどのような形で待機しているのでしょうか?

私は2時間おきに体位を変える必要があります。その時間は介助者が必要ですが、それ以外の時間は、基本朝まで待機(見守り)です。自信がある介助者は用意している布団で仮眠をとっていますね。必要な時は声で呼ぶこともあるので、起きる自信がない方は15分おきにアラームをかけていたり、横にならずに壁に寄りかかって休んでいたりとそれぞれ工夫しているようです。これも介助者の性格によって違うので面白いですね。

―――介助者とのコミュニケーションについても、別の機会で詳しくお尋ねしたいです。nでは、これからの目標や、やってみたい事を教えてください。

もっと動画編集、チラシなどのクリエイティブの担い手を増やしたいですし、そうした仲間をマネジメントしながら一緒に仕事ができる環境を作ってみたいです。
具体的には、病院に入院している人たちの雇用の場をつくりたいです。病院での生活は、病院の時間・ルールに合わせた生活なので、自主的にやることが少ないのです。

趣味や仕事の時間が入れづらい環境は私も経験上理解しているので、その中でもできる仕事をこちらから提案し、地域に出てこられなかったとしても、病院で社会とつながり、仕事ができる環境をつくりたいと、ここ1年くらい思っています。

例えば、チラシ制作でもクライアントと直接話す人と作業を進める人を分担したり、さらに作業ではラフ案を作る人、デザインに落とし込む人、校正する人、一人でプロジェクトや案件を担当するのではなくて細かく分けて掛かる負担とリスクを分かち合えたら強いクリエイティブなチームができると思います。また、ここ最近スマートフォンやSNSへの依存が社会的に問題になっていますが、そうした状況から脱却させるため、強制的にデジタルデトックスの環境(電子デバイスを使わない状態)をつくり、監視するサービスがあります。見張り役は看守役としてずっとPCを見て、必要に応じて声をかけたり、メッセージを送信したりするわけですが、こうした仕事は、病院でケアを受けながら生活している仲間がうまくコミットできる仕事だと思います。

病院で過ごす時間が充実したものになるように、どうしようもない状態、どうすることもできない状態を、どうしようもあるに変えていきたいと考えています。

―――最後に、読者の方へメッセージをお願いします!

先日、就活をしていたころの自分のFacebookの投稿を見ました。なかなか仕事が見つからないけれど、将来的に動画編集を仕事にしたいと書いていました。これは今まさに実現できていることです。ハードルは沢山ありましたが、諦めなければ実現できるし、ものにできると感じました。様々な資源を活用しながら、諦めずに挑戦し続けることが大事だと思っています。


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