公開日
2022.01.05
「どうしようもある」状態の具体的な事例紹介①
ここからは「どうしようもある」具体的な事例を見ていきます。
※以下の記事内容は、紙面の都合上概略で紹介しています。詳しい内容や経緯に関しては、末尾の参考資料をぜひご覧ください。
2015年に難病の患者に対する医療等に関する法律(難病法)(※1)が成立しました。難病法は、治療法が確立されておらず、長期の療養が必要な難病をもつ人の医療費支援や生活の支援について安定的な財源を確保し、調査研究を推進することを目的としています。
難病法制定以前は、1972年に策定された「難病対策要綱」に基づき、医療費の支援が行われてきました。ただし、医療費の支援を受けられる難病の数に限りがあり、難病の要件を満たす疾患でも、支援が受けられなかったり、安定的な予算がなかったりと、多くの課題がありました。(※2)
この難病法の成立には、地域の難病団体や協議会、それらが合併して2005年に誕生した日本難病・疾病団体協議会(JPA)が大きな役割を果たしています。(※3) 勉強会や集会を何度も開催して国会請願を行い、難病相談支援センターの設置や、全国難病センター研究会の発足を行いました。
また、JPAは、難病対策を検討する国の委員会(厚生科学審議会疾病対策部会難病対策委員会)に、患者団体の代表として参加し、難病当事者や患者会の様々な要望を代弁して議論を重ねました。法律の成立にあたっては、「新しい難病対策の推進を目指す超党派国会議員連盟」の結成(※4)を行い、国会とのパイプを形成しました。
難病対策委員会で患者会が要望し・国や専門家と合意形成した内容は、難病法の基本理念や方針部分に大きく影響を与えています。2011年12月の難病対策委員会の中間的整理(※5)においては、
- 希少・難治性疾患は遺伝子レベルでの変異が一因であるものが少なくなく、人類の多様性の中で、一定の割合発生することが必然
- その確率は非常に低いものの、国民の誰にでも発症しうる可能性がある(中略)
従来の弱者対策の概念を超え、希少・難治性疾患の患者・家族が我が国の社会が包含し、支援していくことが、これからの成熟した我が国の社会にとってふさわしい
ことが基本的な認識とされ、それが難病法の基本理念:
難病の患者に対する医療等は、難病の克服を目指し、難病の患者がその社会参加の機会が確保されること及び地域社会において尊厳を保持しつつ他の人々と共生することを妨げられないことを旨として、 難病の特性に応じて、社会福祉その他の関連施策との有機的な連携に配慮しつつ、総合的に行われなければならない
に大きく反映されました。これは医療的側面だけでなく、難病当事者が社会で当たり前に生活をしていくことが前提とされ、患者会や家族の思いを十分に取り入れたものとなっています。
法律の制定には、多くの難病当事者や、それをまとめて「こえ」として形成し、国に届けた組織など、課題解決に当事者が深くかかわっていることが分かります。
私たちが考える、「どうしようもある」状態は、ひとつ前の記事でご紹介した通り、
困っていたり生きづらさを感じたりしている人達の課題が共有され、当事者として課題解決のための取り組みに主体的に関わっている状態
です。今回は難病法を例にご紹介しましたが、他にも困っている当事者が自分たちで課題を共有し、解決のために関わってきた例はたくさんあります。
ピーペックでは、こうした大きな社会的な課題から、個人の生活レベルでの課題まで、あらゆる課題を当事者として考え、解決に向かって主体的に関わる状態が当たり前になるように、様々な方向から活動を続けています。
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/nanbyou/index.html
https://www.mhlw.go.jp/content/000527525.pdf
(※3)医療と社会 2018 年 28 巻 1 号 p. 27-36
患者会の活動と難病法(難病の患者に対する医療等に関する法律)の成立への関わり-患者会の視点から- 伊藤たてお
https://doi.org/10.4091/iken.29.027
(※4)JPA 新しい難病対策の推進を目指す超党派国会議員連盟」が誕生!(2021年9月)
http://www.nanbyo.jp/betusite/120906girensokai/1.html
参考資料
(難治性疾患等克服研究事業(難治性疾患等政策研究事業(難治性疾患政策研究事業))研究 難病患者への支援体制に関する研究 「難病相談支援センターの役割」に関する分担研究
難病相談支援センターの役割に関する研究報告書(平成28年3月)
https://www.nanbyou.or.jp/wp-content/uploads/upload_files/kenkyu1.pdf
The Nonprofit Review, Vol15, No.1, 13-26(2015)
難病対策法制化審議における熟議民主主義の形成 ―ステークホルダーの言説を事例として― 内藤真弓
https://www.jstage.jst.go.jp/article/janpora/15/1/15_13/_pdf
患者運動、障害者運動のあゆみとこれから 2016年第1刷
一般社団法人 日本難病・疾病団体協議会